** Season's Greetings ** 湯楽粋笑

季節のご挨拶:温泉と日本酒、全国各地のたのしいことや美味しいもの、いろいろ。

肘折温泉「地面出し競争ワールドカップ2023」に東京代表で参加!

日本一、二を争う超豪雪地帯、山形県最上郡大蔵村肘折(ひじおり)温泉。

「肘、折るの!?」と驚かれそうな温泉地名だが、その逆で、

肘を折った老僧がこの地のお湯に浸かったところ、

たちまち傷が癒えた、という云われから。(諸説あり)

 

肘折温泉の旅館は全部で二十軒、

ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉の名湯がすべてのお宿でかけ流し。

全長1キロにも満たない距離に密に温泉街が広がり、

古くからの湯治宿も多いことから、

どこから見てもなかなかの風情あるレトロな情緒の町並み…。

 

開湯千二百年を数えるそんな静かな温泉街が、

年に一度、かなりの盛り上がりを見せる時がある、それが…

「地面出し競争world cup in 肘折」、そう「ワールドカップ」、ですよ!?!

 

決戦は2月最終週末、いちばん積雪が多いころ…。

コロナ前から気になっていたイベントに2023年にようやく参戦。

「いかに速く雪を掘って地面を出せるか」を競う一見単純そうな競技、

ただし3m以上降り積んだ雪から地面を掘り出すのは尋常ではない…。


今回、賛同してくれたメンバーは、

若手3MUチームからユグチさん・ふろむさん、

「秘湯ロマンス隊」隊長の両腕となり「温泉百名山」を踏破してきた格さん=鹿さん・

助さん=まめたさん、その奥様晶子さん、

唯一地元山形出身の亜希子さん、そして新潟出身の私。

 

亜希子さん以外の関東圏メンバーは、折角東北まで足を運ぶなら…と、

前ノリでまずは福島県会津若松の東山温泉「向瀧」の由緒ある皇室専用部屋に

大人数で宿泊、翌日は電車やバスを使って移動、山形入りし東根温泉泊。

 

その翌日も電車とバスで移動し、3日目にようやく雪深い肘折温泉へ…。

おなじ東北雪国でも、福島や山形東根のそれとは全然違う肘折温泉の雪… 

到着したときも、文字通りぼそぼそ降っている綿雪に、思わず笑いがでましたもん。

あはは…! 

このまま雪止まなかったら、この降りしきる中、地面出し競争するってワケ!?

 

地面出し大会は、前日夜に前夜祭もセッティングされ。

参加費ひとりあたり千円。

大会申込書に前夜祭参加有無の欄があったので、

前向きな意思を見せるためにも勝手わからぬまま「参加!」に丸印。

 

今回お世話になったお宿「亀屋旅館」女将さんにお願いして

早めにお夕飯を出していただき

(あのメンバーで膝付け合わせてノンアルで旅館のお夕飯を食べたのは初めて!)、

18時半過ぎには、会場となる「つたや肘折ホテル」に。

(ここがまた、シブイ混浴内風呂「宝泉」があるんだな…)


二階へ上がったら…「地面出し競争前夜祭様」の看板あり、覗くと…なんと広い会場!

百畳ほどある大広間。

実はその頃(2023年1月)は、まだコロナ鎮火とは言い切れなかったころ。

こんな広いお座敷でこの人数の宴会…!? ひ、久しぶりだ…(笑)


新参者ゆえ少し早めについた私たちは、

ここでも前向きな意思を見せるためにも中央真ん中あたりに、

この日のために誂えた揃いのTシャツを着て陣取り。

 

 

19時スタート間際になると、…来るわ来るわ! 

続々と、老若男女、地元の方から海外の方、youtuberまで…!?! 

あっというまに会場内満席以上の御礼状態。


前夜祭では、主催者の開会のあいさつからはじまり、乾杯、前大会の記録動画放映、

地面出し競争の詳細ルールの説明(これがまた外国チックなイラストでツボ!)、

そして各チームそれぞれの意気込み表明を兼ねたPRタイムまで。

主催者側の挨拶にあったフレーズ、

「地面出し大会は前夜祭こそが本番、もうこの瞬間から勝負は始まっています!」。

この真意をあとで聞く。

なんと、競合チームを酔いつぶすという豪快な作戦…。

策にハマりお酒を飲まされすぎて、翌朝、

二日酔いのカラダを引きずりなんとか会場まで来たけれども、

受付だけ済ませて棄権&敗退…。そんなチームも居たらしい。。

 

おお、吟醸王国やまがた、恐るべし…。

 

今回、エントリーしたチーム名は「秘湯ロマンス隊有志」。

元気な若者たちは前夜祭会場で地元の青年会メンバーにスカウトされ、

そのまま二次会に連れていかれ、かなりの酔い加減で戻って来たのが0時過ぎ。

ユグチ氏、ふろむ氏、

「本当にみなさんすごい飲むんですよー!」と驚いて帰ってきたっけ。

山形ではまず焼酎は並ばない、あるのは日本酒。

…君たち、明日大丈夫か!?(笑)

 

翌朝、変わらずぼそぼそと降る雪、積雪はいよいよ大会当日に290㎝を数え

あれだけ昨晩大酔っ払いだったユグチ氏、ふろむ氏も平気そう。

さすが若者、むしろいつも以上に元気!?


ワールドカップ会場となる肘折生涯学習センター前のグラウンドは、

温泉街から徒歩で10分ほど。

高台のうえにあるので、地図上はゆるいカーブの道を行けばすぐ、

だけど、意外に斜度もあり、朝からいい運動にはなる。

防寒を念入りに、お揃いのTシャツを仕込み、手袋をし、雪国用長靴を履き、

いざ出陣!

 

会場は一面の雪景色。

9時:大会受付開始

9時40分:開会式、
=ちゃんとここで、優勝旗ならぬ優勝スコップ(金・銀・銅)の返還式がある! 

 

10時:ソリンピックin大蔵山シャンツェ
=このそり滑りで、フィールド内の雪堀エリアが決まる、という算段。

我がチームからはユグチ氏に登場いただき、

小学生が乗るようなプラスチックのそりを操り、見事な滑走!

 

確か22番目くらいだったかと…(笑)

この順位でエリアを決めたら、

11時:41チーム209名が法螺貝とともにスタート! 

新雪が膝上まで積もるフィールドを、まずは自分たちのエリアまで雪を蹴散らし猛ダッシュ! 

1チーム6名編成、会場でお借りしたスノーダンプ2台、スコップ4つを各々手に取り、

前夜祭で教えてもらったフォーメーションを意識して掘り進めていく…。

スコップ手に雪堀りしているときは本当に汗だく、

だけど交代で休んでいるときは深々と寒さが身に染みてくる…。

 

はやくこの3m近い雪を掘って土を出さないと…! 

そして熱い温泉に浸かりたーい!! 

 

 

優勝チームはわずか7分37秒で290㎝掘って土を手にしゴールへ。

3mを7分で掘る!?? さすがは地元新庄の企業チーム。

再下位41位のチームは58分35秒。

私たち「秘湯ロマンス隊有志」は…38分36秒! 

最後はさすが地元山形県民堀り役者の亜希子さんが見事、地面を掘りあててくれ、

あとは元気な若者にその土が付いた雪の塊を託し、

彼らは雪にまみれころげながら一路ゴールへ…! 

ゴールに待つ審査員がチェックし認定、

「肘折温泉の春を掘り出しました~!!」

(このユニークなお祭り行事は、案の定各テレビやメディアなどに取り上げられ、
このおふたりもバッチリ映っておりました!)


記録的には41チーム中34位だったけど、

途中、覗きに来てくださっていた先達の方から言われたひとこと、

「初参加でこれだけやれたら立派! もう伸びしろしか感じない👍」 てへ。

 

12時半、表彰式。

金銀銅のスコップは手に出来なかったけど、やりきった感で充実! 

かじかんだ足先手先をなんとか誤魔化しつつ、お宿に戻り、

浸からせていただいた温泉の、なんとじんじん沁み入ったことか… 

ふぅ、生き返った…!

 

「地面出し競争ワールドカップin肘折」、

私も新潟出身だから身に染みてわかるけど、

雪国人が連日イヤだと思いながらやっている雪のけ(除雪)を、

こんな楽しいアクティビティに変えてしまっているところがもはや座布団もの。

 

文献を拝見すると、肘折温泉では30年以上も昔から

肘折小中学校の雪上運動会の名物競技として行われていたのだそう。

 

実に14回目を数えるこの大会、

山形県内それも肘折周辺からの参加者がほとんどだけど、

遠くは熊谷・所沢・名古屋・仙台・鹿嶋・横浜、そして私たちのように東京から!

 

今回、なぜ自由原稿のテーマで取り上げようと思ったか… 

理由は、検索してもあまり参加者側の情報が出てこないのと、

温泉地がこういう唯一無二のイベントをしていることで、

絶対温泉地活性化につながっている!と確信したから。

ならば更に盛り上げて行きたい! 

今年は大雪だったから冗談抜きで本当に大変だったけど、

例えばこれが150㎝くらいの積雪で、青い空の下で太陽の光を浴びて、だったら、

もっとお気楽ご気楽でたのしそう! 


参考までに調べてみたところ、

過去11回開催のうち一番雪が少なかった2019年は積雪量122㎝、

優勝チームは1分22秒、最下位は5分59秒! 

…これは断然気が楽! 

 

来年は小雪を願おうかな(笑)

 

 

(『温泉達人会』会報vol.17自由原稿として寄稿)

 

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